企業会計では、証ひょう・伝票と呼ばれる資料を元に会計処理が行われます。
この記事では、証ひょうの見方や伝票のメリットを実務・簿記学習、どちらにも役立つ内容をまとめています。
証ひょうと伝票
証ひょうとは、取引の金額や相手を表す資料です。領収証や納品書・請求書などがあります。
伝票とは、取引内容を仕訳するメモ帳のようなフォーマットです。1伝票制・3伝票制・5伝票制があります。
ア.証ひょう
証ひょうの種類には、領収証や小切手、取引照会などがあります。どの書類も会計帳簿に記録するときに、取引の中身を全て読み取れる内容となっています。
■例えば、納品書には以下のような情報が書かれています。
仙台商事 御中
冷凍惣菜卸 青葉商事
品名 肉まん 30個入(単300円/箱)×10箱 ¥3,000-
支払金額¥3,000-
栃玉銀行仙岩支店
当座預金12345678
名義アオバショウジ
これらの情報を元に、仕訳を起こすことができます。
実務では、テキストのように取引の内容が文章で並んでいるという場面は無いので、証ひょうを元に取引内容を読み取り仕訳を行います。
イ.伝票(入金、出金、振替の各伝票)
伝票には下記の種類があり、現金の出入りが多い場合に入金伝票と出金伝票を使います。
入金伝票の束そのものが借方現金を表すので、都度仕訳を起こすよりも業態によっては効率的です。
・入金伝票:現金の入金(借方が現金の時)
・出金伝票:現金の出金(貸方が現金の時)
・振替伝票:現金以外の取引
・仕入伝票:掛けでの仕入
・売上伝票:掛けでの売上
また、伝票を使った会計を採用する場合には、さらに下記の3つの形態にわかれ、どれを使うかは企業の判断となります。
・1伝票制では、仕訳伝票のみを使います。
・3伝票制では、入金伝票・出金伝票・振替伝票を使います。
・5伝票制では、入金伝票・出金伝票・振替伝票・仕入伝票・売上伝票を使います。大前提として、すべての仕入と売上は掛けによるものとします。
なお、実務での採用頻度は、3伝票制>5伝票制>1伝票制、簿記検定では3伝票制が主に出題されます。
3伝票制をしっかり学習していれば、5伝票制への応用もスムーズにできるようになります。会計ソフトでは5伝票制へ一括変換できますが、中身を理解しておくことが大切です。
ここでは、3伝票制による例を紹介します。
(例)伊達工業へ、商品700円を売り上げた。500円は現金で受け取り、200円は掛けとした。
入金伝票 |
売上 500 |
出金伝票 |
振替伝票 | |||
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 200 | 売上 | 200 |
3種類の伝票のうち、この取引では入金伝票と振替伝票をつかいます。振替伝票には、現金による取引以外を記録できます。
ウ.伝票の集計・管理
伝票制会計は、経理知識のない従業員が取引を記録できる手段です。
たとえば、家電や住宅設備の修理など作業員が現地で領収する場合、伝票を使うことで業務効率化をはかります。
このように伝票起票は現場にいる従業員が行いますが、その集計や誤記・紛失の確認、保管などの管理は経理担当者が行います。
大きな流れをみてみましょう。
■伝票起票→伝票集計→総勘定元帳
…伝票から直接、各勘定に転記する方法
■伝票起票→伝票集計→仕訳日計表など→総勘定元帳
…仕訳日計表をいったん間にとおしてから各勘定に転記する方法
※伝票が仕訳そのものと同意なので、仕訳帳を使うか否かは、どちらでも良いです。
自動会計ソフトでは、伝票入力をすれば、各勘定に反映されます。
仕訳一覧もデータとして出力できますが、経理担当者は、伝票会計そのものの流れを知識として知っておけば多くのメリットがあります。
ピンポイントでデータをひろう速度があがったり、経理担当以外への従業員に解説したりすることがスムーズになります。
証票と伝票は簿記の基本
会計ソフトに入力する前の段階では、証ひょうから仕訳を起こしたり、伝票を管理したり、簿記会計の知識が必要な場面がたくさんあります。
簿記の知識をしっかり活かせるよう意味を理解しながら学習を進めると良いでしょう。