この記事では前回に引き続き、決算整理事項に記載される論点をまとめています。
決算整理事項は量が多いので誰もが苦しく感じるテーマです。もう一歩ですので、決算問題対策として最後まで御覧ください。
決算整理事項
ア.収益・費用の前受け・前払いと未収・未払い
決算整理では、経過勘定の整理仕訳を行う問題が出されます。
時の経過により当期分の費用収益になる部分と翌期分の費用収益になる部分を区分する仕訳です(見越し・繰延べ)。
経過勘定には次の4つがあります。
・前払費用
・前受収益
・未払費用
・未収収益
経過勘定は”時の経過”に基づく概念です。とても重要なポイントです。
さまざまな簿記の解説動画やブログがありますが、「未収金」「未払金」と混同された間違った情報があります。注意してください。
では、それぞれの経過勘定ごとに確認しましょう(3月31日決算日)。
「前払費用」
当期中の支払額=当期費用+次期費用
〈例〉保険料を6月に1年分(120円)支払った
・期中に支払った時の仕訳
(借)支払保険料 120 (貸)現金 120
・当期費用から翌期4.5月の分をマイナスするための決算整理仕訳
(借)前払保険料 20 (貸)支払保険料 20
6.7.8.9.10.11.12.1.2.3月の10ヶ月分は当期費用
→P/Lの費用項目に記載
4.5月の2ヶ月分は次期費用
→B/Sの資産項目に記載
「前受収益」
当期中の受取額=当期収益+次期収益
〈例〉地代を6月に1年分(120円)受取った
・期中に受取った時の仕訳
(借)現金 120 (貸)受取地代 120
・当期収益から翌期4.5月の分をマイナスするための決算整理仕訳
(借)受取地代 20 (貸)前受収益 20
6.7.8.9.10.11.12.1.2.3月の10ヶ月分は当期収益
→P/Lの収益項目に記載
4.5月の2ヶ月分は次期収益
→B/Sの負債項目に記載
「未払費用」
次期中の支払額=当期費用+次期費用
〈例〉今期の6月1日に契約した借入金(期間1年)にかかる利息(120円)の支払いは、満期日である翌5月31日に行う
・期中に借入れた時の仕訳(利息部分のみ)
仕訳なし
・当期費用にプラスするための決算整理仕訳
(借)支払利息 100 (貸)未払利息 100
6.7.8.9.10.11.12.1.2.3月の10ヶ月分は当期費用だが、支払日がきていない
→P/Lの費用項目に記載、B/Sの負債項目に記載
「未収収益」
次期中の受取額=当期収益+次期収益
〈例〉今期の6月1日に契約した貸付金(期間1年)にかかる利息(120円)の受取りは、満期日である翌5月31日に行われる
・期中に貸付た時の仕訳(利息部分のみ)
仕訳なし
・当期収益にプラスするための決算整理仕訳
(借)未収利息 100 (貸)受取利息 100
6.7.8.9.10.11.12.1.2.3月の10ヶ月分は当期収益だが、受取日がきていない
→P/Lの収益項目に記載、B/Sの資産項目に記載
なお、経過勘定項目は、期首再振替仕訳の対象です。決算整理が理解できたら、さらに学習をすすめてください。
(この例文では、損益計算書=P/L、貸借対照表=B/Sと記載しています)
イ.月次決算による場合の処理
企業によっては、リアルタイムでの業績把握や売上分析などを目的に”月次決算”を行う場合があります。
試験では、個別問題で月割計算を論点に出題されることがあります。
次のような会計処理が、月次決算による主な項目です。
・各勘定残高の差異
・月次棚卸
・仮払金・仮受金の処理
・減価償却費などの月割計上
・試算表作成など
経理現場では、会計ソフトでリアルタイムの財務諸表データを見ることができます。
簿記学習をしている人なら、月割であることや経過勘定項目などの計算根拠を読み取ることが可能。
年度末に向けての戦略や節税対策につながります。
経過勘定を制しましょう
この記事では、多くの受験生が苦手とする経過勘定の基礎知識をお届けしました。
簿記独特の考え方が強いられるのが経過勘定の会計処理です。
経過勘定を制すれば、簿記力がアップするので乗り越えられるよう練習を繰り返してみてください。