費用が借方に計上される理由
複式簿記の基本となる5つの要素のうち、これまで資産、負債、純資産について説明してきました。
今回は、残りの「費用」と「収益」について詳しく見ていきます。
まず、前回の【例1】の続きとして、以下の取引が発生しました。
【例1】
6. 7月23日 事務所の電話料金20万円を現金で支払った。
ここでは、現金(資産)が減少したため、「現金」勘定の貸方に20万円を計上します。
【仕訳】(単位:万円)
(借)??? 20
/(貸)現金 20
さて、この取引の借方は何になるでしょうか?
電話料金という支払いには、物理的な資産は存在しませんが、「電話を使って事務所内から外部と連絡を取る」という便益を得たことになります。
この場合、代価として支払った現金は消費されてしまい、形に残らない「費用」が発生します。この「費用」のグループに属するのが「通信費」です。
これで、「費用」が「資産」と同じ借方に記入される理由がわかりやすくなったと思います。
【仕訳】(単位:万円)
7月23日
(借)通信費 20
/(貸)現金 20
収益が貸方に計上される理由
次に、収益がなぜ貸方に計上されるのかを見ていきましょう。
【例1】
7. 7月30日 以前に150万円で仕入れておいた商品を200万円で販売し、現金で受け取りました。
ここでは、150万円の商品を売った対価として200万円の現金を受け取ったので、
【仕訳】(単位:万円)
(借)現金 200
/(貸)商品 150
となります。しかし、このままだと借方と貸方の金額が一致しません。では、200万円の内訳を見てみましょう。
150万円は商品の売却分(原価)
残りの50万円は「儲け」にあたります
この儲け部分が「収益」として計上されることになります。つまり、得られた200万円のうち、150万円は商品の等価交換、残りの50万円は何の資産も失わずに得た収益ということです。
【イメージ】
(借)現金 150 ← 交換分 →(貸)商品 150
(借)現金 50 ← 儲け分 →(貸)商品売買益 50
このように、「収益」は「貸方」に計上されます。
【仕訳】
7月30日
(借)現金 200
/(貸)商品 150
/(貸)商品売買益 50
費用と収益が損益計算書に
これで、「資産」「負債」「純資産」に加え、「費用」と「収益」の2つのグループが加わり、合計5つのグループが簿記の基本です。
これまで見てきた3つのグループ(資産・負債・純資産)は「貸借対照表(B/S)」に表され、費用と収益は「損益計算書(P/L)」に反映されます。
損益計算書は、ある期間におけるすべての費用と収益を集計し、その差額を「利益」または「損失」として表示します。
例えば:
総費用が総収益より少なければ「当期純利益」
総費用が総収益を上回れば「当期純損失」
【例1】の6, 7の取引を損益計算書に表すと次のようになります。
損益計算書で利益や損失を計算する際、商品を売るためには電話代だけでなく、事務所の経費や人件費など、その他の費用も考慮する必要があります。